《特別寄稿》“ひのきのつみき”プロジェクトから6年
2018.05.23 update 元災害救援事務局長 山田弘乘東日本大震災七回忌に際しまして、あらためて震災被害者のご冥福と早期復興がかないますように御祈念申し上げます。
去る平成29年3月10日、福島県いわき市に、長岡顧問、射馬監事、東野事務局長、門屋事務局次長と共に“ひのきのつみき”プロジェクトでお世話になった皆さんにご挨拶に行ってまいりました。
“ひのきのつみき”プロジェクトとは、2011年に全青連の会員各位より浄財をつのり、原発事故で屋外遊びプール遊びなどの保育活動ができなかった保育園の子どもたちに和歌山県産のひのき材でできたつみきを贈る事業でした。皆様からのご理解、ご協力のもと、二回に分けて福島県いわき市、会津若松市、喜多方市のすべての民間保育園(43施設)に配布させて頂きました。
今回、6年という月日が経過し改めて、 “ひのきのつみき”プロジェクトでご尽力をいただい日本保育協会福島県支部支部長(当時)の坂本佳友園長先生(いわき市はと保育園)いわき市議会議員(現在3期目)の赤津和夫先生(いわき市大倉保育園)と6年ぶりにお会いでき、いわき市や保育園の復興の現状などお聞きしました。震災当時、園舎の被害が大きかった大倉幼稚園は、建て替えに早くから取り組み、自治体からの補助もあり、現在では新しい園舎での保育が行われています。しかしはと保育園は、当時の福島県支部長というお立場から福島県の保育園全体の復興に取り組まれた結果、自園の復興がどうしても後回しになってしまいました。そしていざ自園の復興をと考えたとき、耐震基準の強化や建築コストの高騰などで立て替えがなかなか困難だそうです。現在は、被災した園舎の自体の傾きはそのままで、床の傾きを調整して対応しています。そこで、園長自ら高圧洗浄機で園舎や遊具を除染し、運動場の土を綺麗な砂に入れ替えることで、被災前の線量まで軽減することができています。子どもたちの生活に関しては、園内で使用する水(飲料水、生活用水)のすべてを、チェルノブイリなどでも実績のあるシーガルフォー(浄水器)を二重に配置し除染しており、給食などでも福島県産のもの(この福島県産のものは基準値以下の安全なものですが念のためにつかっていない)は使わないなどの徹底した安心安全の取り組みをされています。当然、コスト面では効率が悪くなるのですが、この地道な取り組みにより、保護者の方々から信頼される保育ができていまるようです。ちょうどお迎えの時間に保育園にご挨拶に伺いましたが、6年前と違い園庭で遊びながら保護者の方をまつ子どもたちの顔が笑顔で輝いていました。
つぎに、いわき市の復興現場も視察させて頂きました。場所は6年前とおなじ塩屋崎灯台付近の薄磯地区です。この地域は津波により120名以上が犠牲になり、265世帯のほとんどが流されています。もともとは灯台を中心に綺麗な海岸線が見える観光地域だったそうです。現在は平成25年~平成29年の3月末の工期で「豊間・薄磯地域整備工事」として防災緑地と復興住宅の工事が行われています。しかし工期終了あと数日となったいまも大型の重機が土地を造成しており完成にはほど遠い現状でした。海岸線には高い防潮堤が築かれ海が全く見えない風景になっています。今後、オリンピック関連の工事等が始まれば、一層工期の遅れも考えられ、ここに完成する復興住宅に入居する人たちもまだまだ仮設住宅に残らなければなりません。2020年までに復興が完了すると言いますが現状はそう甘くないように感じます。
当時の全青連として、災害救援事務局として、各派青年教師会の皆様が、独自に発災直後から被災地に赴き、各地での御供養等やボランティア活動、さまざまな支援を行ってくださっていたことはおおよそは把握できておりました。また各御本山様と各派青年会様との連携などの事情もある程度は理解しておりました。しかし災害救援事務局として本来の職務である各派ご本山、各派青年教師会の活動の横のつながりなどを調整するまでに到らず本当に心苦しく感じております。実際この6年間、全青連、災害救援事務局の取り組みとして、“ひのきのつみき”を配布しただけで終わってしまったように感じておりました。しかし、今回のいわき訪問で坂本先生より「ほんとうにありがたかった」「遠くの人たちが、自分たちの子どもたちのためにこれだけのことをしてくれるんだ」「自分もがんばらないとダメだ。そう思ってあのときは動いてました」「折れかけた気持ちをつないでもらいました」とというお言葉を頂き、“ひのきのつみき”というものだけでなく私達の気持ちも届いていたんだと感じホッといたしました。
最後になりますが、六年前に全青連の会員皆様の御浄財をお預かりして、いわき市、会津若松市、喜多方市に“ひのきのつみき”を届けることができたのもお大師様のお導きと皆様のご協力の賜であったと確信しております。会員の皆様からいただいた御浄財で購入いたしました“ひのきのつみき”86,000ピースは、今も福島県の子どもたちの笑顔を作ってくれています。“ひのきのつみき”プロジェクトにご協力頂いたすべての皆さんに心よりお礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
(この記事は機関誌『全青連』39号へ掲載したものの詳報です)